落雷被害から電気・電子機器を守る
“最後の番人”「SPD」
近年、高度情報化社会の発展に伴い、落雷による情報通信システムの雷被害が増加しています。その多くは、建物に直接被害を及ぼす直撃雷ではなく、各種回線から雷サージが侵入して機器を破壊する誘導雷です。避雷針だけでは防げない誘導雷への雷害対策を担うSPD(避雷器)について、機器の破壊がおこるメカニズムからSPDの仕組みまで、分かりやすくご紹介します。
SPD(Surge Protective Device:避雷器)
とは何か
雷の電流は非常に大きく、落雷の影響により、その周辺には「雷サージ」と呼ばれる短時間で一時的に発生する異常な過電圧、過電流が発生します。
発生した雷サージは電源線や通信線を通って建物内の電気機器に侵入し、機器に被害を及ぼします。 この雷サージによる影響は落雷した地点から、数km先にまで及ぶことがあり、すぐ近くの落雷でなくても被害をもたらす可能性があります。
落雷による工場や建物内の機器被害は、発生した電流が電線などを伝って建物内の機器に進入し、破壊することが原因です。したがって、電流が機器に到達する前に機器破壊しうる電圧部分のみを大地に流すことで工場や建物内の電気・電子機器の安全を守ります。
SPD(避雷器)の役割イメージ
回線ケーブルを抜けば、被害は防げるが…
スイッチOFF
回線ケーブルを抜く
単にスイッチをOFFにするだけでは雷サージを遮断できないので、対策になりません。もっとも簡単に雷の被害を防ぐ方法は、雷サージの通り道をすべて遮断してしまうこと。つまり「電源コンセントを抜く」「通信ケーブルを抜く」などの対策が一番有効といえます。
しかし、様々な電化製品やインターネットと繋がり続ける現代において、落雷の度にそれらを抜き差しするのは言辞的ではありません。
そんな状況で活躍するのがSPDなのです。
避雷針と避雷器(SPD)の違い
雷の被害は大きく2つに分かれます。雷が直撃することによる被害(直撃雷)と、落雷によって生じる間接的な雷サージの被害(誘導雷)です。
それぞれ全く別の対策が必要となり、2つを合わせて雷対策と言えます。
避雷針
建物を保護
雷は高いところに落ちやすいと言われています。そこで、避雷針を建物の屋上に設置することで、雷の建物への直撃を防ぎます。
避雷器(SPD)
電気・電子機器を保護
雷による被害
気象庁の発表によると、雷に起因する物損などの一次被害および休業損失などの二次的な被害総額を含めると年間1000億~2000億円(※電気学会技術報告第902号:2002年)といわれています。
近年の電気・電子機器はマイコン化や高集積化、ICT化が進み、常に雷害リスクにさらされています。電源ケーブルの焼損や、一見、故障と判別しづらい集積回路の破損など、被害は多岐に及びます。
制御盤内の部品損傷
制御盤内の端子台とケーブルの損傷
雷サージによる基盤の損傷